2013年02月22日

無口で口べた

入院中のOさんは、私が行くといつも

「大西さん、コーヒー飲みに行こうか~!」
「わし、無口で口べたやから、何にもよ~言えへんねん~」

8階からエレベーターに乗り、1階ボタンを押すと
「誤解(5階)のないように」

と冗談を言って笑わせてくれます。

車いすを押して、1階のローソン喫茶店に行く。
「わし、ホットな」

「は~い」

そんな会話を続けている。

お父さん思いの娘さんが
介護疲れで体調を崩され、病院で1か月
Oさんを見てもらうことになりました。

「わしが家にいてたら娘が休めへんやろう?」
「あいつもよ~やってくれるさかいな」と涙ぐみながら
話して下さいました。

そんな我慢もあと5日。
「あと5日でわし、退院できんのやな~」

「待ち遠しいね」

「大西さんと会えへんようになるんはさびしいわ~」
「わし、無口で口べたで気弱いし・・・」

病院のデートもうすぐ終わり。

私も少しさびしいな~。










  

Posted by どこでも介護 at 21:13Comments(0)

2013年01月30日

九州行きたい!

「お久しぶりです」
「私のこと、覚えていますか?」

「そらあ~覚えてるよ~」
Mさんは、にこにこ笑いながら、私の顔を懐かしそうに
見られた。

高次脳障害という脳の後遺症があるため、
すぐに忘れてしまうMさんを、心配そうに次女さんが
見守る。

「で、どこへ行きたいですか?」

「あのね、九州に行きたいの~」
「九州のどこ?」
「湯布院!」

「へえ~どうして湯布院?」

「えっと~?何があるか、ようわからんのやけど・・」
「昔、お父さんと新婚旅行で行ったわ~」

「ああ、そうだったの」

「九州新幹線に乗りたいの」
「今度は、私の喜寿の祝いやからな~」

なるほど。
「どこかわからんけど、何があるか教えて~」

じゃあ、計画を立てよう。
ここからが旅行ね。





  

Posted by どこでも介護 at 23:52Comments(0)

2013年01月30日

助けて

「急にごめんな~」

「お父さん、入院することになって・・・」
「急に悪いんやけど、大西さんとこで、付添頼めるかな~」

「お父さん、どうされたんですか?」

「いや、お父さんは悪くないんやけど、私が倒れそうなん・・・」

「くすり飲んでるけど、腰痛やら頭痛やらで、もうあかんの」



吸引の必要なお父さんを、献身的に介護されていた
娘さん。仕事との両立が限界のようだ。
受け入れてくれるショートステイがなくて、
病院がやっと受け入れてくれたそうだ。


「わかりました」


「お父さん、喜んでるわ~。」
「大西さん、来てくれはるって・・・」

どうやら、以前おじゃましたことを覚えておられる
ようだった。ホットした。

介護は一人でがんばらなくてもいい。
ときには、伴走者になって一緒に家族を見守る仕事。
私がやりたい仕事である。




  

Posted by どこでも介護 at 23:40Comments(0)

2013年01月01日

初詣

「おさい銭はな、500円玉と100円玉用意しといて」

場所はどこでもいいからと、近所の神社へお連れする。
「すご~い、列!、並びますか?」

「いやあ~、車いすやからもういいわ~」

「じゃあ、ここの端からお参りしましょう」
「代わりにおさい銭、あげてくるね。」

麻痺した左手が使えないので、
右手だけで合掌。

「今日は、おめでたが2つね」
「76歳のお誕生日、おめでとうございます!」

「ほんまに、うれしいわ~」

「で、何をお願いしたの?」



「ロト6で当たりますように・・・」


  

Posted by どこでも介護 at 23:27Comments(0)

2012年12月05日

これが最期

今日は、ご主人の23回忌。
比叡山延暦寺にお参り。

平均年齢90歳。
ご家族3人が丁重に本堂での参拝を済まされた。

「お位牌、どこにあるんやろ?」
「確か、左の方やったと思う」

そんな話をしていたら、
寺の方が探して下さり、
「ありましたよ」と指を差された。

いきなり、車いすに座っていたSさんが、
身を乗り出し、30センチもの台を乗り越えて
お位牌のご主人のところへ行こうとされているのでした。

2人介助で、両脇を抱えて何とかお位牌まで
たどり着く。

「もう、これへんから」
「これが最期やから」

何度もそう言いながら、
不思議な力に動かされているのでした。

「今日は、いい日やった~!!」

「また、来れますよ」
間違いなく!
  

Posted by どこでも介護 at 20:41Comments(0)ひとりごと